消費税還付(不動産投資)が平成28年度税制改正により封じ込まれる

追いかける警察平成28年度税制改正大綱に、ある改正案が盛り込まれていたことで不動産投資業界に激震が走りました。「不動産投資で消費税還付を受けること」を実質的に封じ込める改正案だったからです・・。

スポンサーリンク
レクタングル(大)

消費税還付と平成22年度税制改正について

消費税還付とは、支払い過ぎた消費税を還付してもらうことを言います。

不動産投資(不動産賃貸業)ではアパートやマンションの家賃収入が非課税売上扱いとなるため、通常、消費税が免税されます。大家さんは国から優遇されているわけです。免税により消費税を支払うことがないことから、支払い過ぎた消費税の還付を受けることもできません。

しかし、敢えて不動産を購入するときだけ消費税課税事業者となり、多額の消費税還付を受けるという手法を取ることができました。不動産自体が高額なため、例えば建物部分だけで1億円(税抜)の不動産を買えば、800万円(8%)の消費税還付を受けることができたのです。そして、資金繰りが重要なファクターとなる不動産投資業界で消費税還付ブームが巻き起こりました。

この消費税還付ブームの火付け役となったのが、自動販売機設置スキームです。家賃収入と違い、自動販売機の売上はすべて課税売上となります。そのため、①消費税課税事業者選択届出により敢えて消費税課税事業者となる、②不動産を購入・新築する、③家賃収入などの非課税売上を発生させない、③自動販売機を設置して課税売上を発生させる、という4つの要件を同時に満たすことで簡単に消費税還付を受けることができたのです。この自動販売機設置スキームは瞬く間に不動産投資業界に広がりブームとなります。

しかし、国としてこの状況は面白くありませんでした。大家さんの消費税は免税にするという優遇措置を取ってあげたのに、敢えてその優遇措置を一時的に捨て多額の還付を受け、またすぐに優遇された免税事業者に戻る、ということをされたら怒るのも当然。消費税還付による税収面への影響もあったことから税制改正へと発展します。

そして、国は平成22年度税制改正により消費税還付を封じ込めました(ように見えた)。

平成22年度税制改正の内容を簡単に言うと、届出書を提出して消費税課税事業者となった後、2年以内に不動産(調整対象固定資産)を購入・新築した場合には、その後3年間は免税事業者・簡易課税への変更ができない、というものでした。

この改正の狙いは、課税売上割合が著しく変動したときの調整という制度の適用を受けさせることにありました。この制度は、課税事業者が不動産を取得した後の3年間で課税売上割合が著しく変動した場合には3年後に調整をするという制度です。なお、課税売上割合とは、総売上高(非課税売上含む)に占める課税売上の割合のことです。

平成22年度税制改正以前では、この「課税売上割合が著しく変動したときの調整」が起こる3年後に免税事業者または簡易課税へ変更することでこの制度の適用を回避することができました。しかし平成22年度改正以後は、不動産取得後3年間免税事業者・簡易課税への変更ができなくなり調整の対象となってしまう、という仕組みです。

しかしながら、平成22年度税制改正では消費税還付を完全に封じ込めることはできませんでした。なぜなら抜け道がいくつもあったからです。

例えば、消費税課税事業者選択届出の手続きにより消費税課税事業者となり、その後2年間は何もせず、3年後に不動産を購入するというスキームを使えば消費税還付を受けることができました。この手法であれば「届出書を提出して課税事業者となって2年以内に不動産を取得する」という要件を外すことが可能だったからです。

他にも改正後に消費税還付を受ける抜け道はいくつもあったので、結局消費税還付を封じ込めることはできませんでした。

そして6年後の平成28年度税制改正で、平成22年度以降の消費税還付スキームを封じ込める改正案がついに発表されました!

平成28年度税制改正の内容

平成28年度税制改正の内容は下記のとおりです。

高額資産を取得した場合における消費税の中小事業者に対する特例措置適用関係の見直し

① 事業者(免税事業者を除く。)が、簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に国内における高額資産の課税仕入れ又は高額資産の保税地域からの引取(以下「高額資産の仕入れ等」という。)を行った場合には、当該高額資産の仕入れ等の日の属する課税期間から当該課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度及び簡易課税制度は、適用しない。
(注)上記の「高額資産」とは、一取引単位につき、支払対価の額が税抜1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産とする。

② 自ら建設等をした資産については、建設等に要した費用の額が税抜1,000万円以上となった日の属する課税期間から当該建設等が完了した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間において、上記①の措置を講ずる。

③ その他所要の措置を講ずる。

(注)上記の改正は、平成28年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合について適用する。ただし、平成27年12月31日までに契約した締結に基づき平成28年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合には、適用しない。

つまり、簡易課税制度を適用していない消費税課税事業者が不動産を購入・新築した場合、その後3年間は免税事業者・簡易課税制度への変更はできないということです。平成22年度改正時のように、「届出書を提出して課税事業者になって2年以内に不動産を取得した場合」という年数制限などが撤廃されたことで、実質的に消費税還付が封じ込まれたと言えます。

もう抜け道はないのか?

平成28年度税制改正でこれまでの消費税還付スキームはすべて封じ込まれました。抜け道がないのか考えてみます。

オフィスビル

居住用のアパートやマンションではなく、商業用ビルはこれまでと同様に消費税還付を受けることができます。商業用ビルの賃貸収入がすべて課税売上扱いなので当然ですね。

他に事業がある

不動産投資以外に事業があれば還付を受けれるケースがあります。他の事業で課税売上があれば、課税売上割合を高くできる場合があるからです。

3年間課税売上割合を高い水準で維持する

不動産を購入した後、3年間課税売上割合を高い水準に維持し続けることができれば、課税売上割合が著しく変動したときの調整を免れ、消費税還付を受けることができます。例えば、課税売上である金の売買を繰り返す手法を取ることが多いです。

不動産の短期売買

課税売上割合が著しく変動したときの調整」は、3年後の末日に保有している場合に行われるため、それまでに不動産を売却することができれば調整不要となります。ただし、消費税課税事業者として不動産を売却することになるため、売却に係る消費税を納める必要が出てきます。あまり意味なし・・。

その他

他にも特定の条件を満たすことで消費税還付を受けるスキームは存在しますが、税務リスクが高かったりなど、あまり使い勝手はよくありません。

個人的な見解

今後も消費税還付は可能と言えます。しかし、下記の理由からデメリットもあります。

①消費税還付の分だけ減価償却費が少なくなるため、長期的に見るとそれほど旨味がない。ただし、短期的な資金繰りの面では大きなメリットがある。

②一般人が消費税還付を自力で行うのは難しいため、税理士に頼む必要がある。その場合、消費税還付の20〜30%程度の成功報酬を税理士に支払う必要がある。

③手法によっては、別途手数料等がかかったり、同一の法人で3年間物件の追加取得ができない場合がある。

④あまりに強引な手法を使うと税務署を敵に回すリスクが高くなる。税務署と仲良く付き合っていくことは事業を続けていく上で重要なことです。

⑤消費税還付スキームを借入先の金融機関が嫌がる可能性がある。

還付によるメリットと上記のデメリットを勘案した上で消費税還付をやるかどうか決める必要があると言えるでしょう。

最後に

消費税還付を行うかどうかは総合的に判断していく必要があります。気になる人は顧問税理士と相談してみて下さいね!

スポンサーリンク
レクタングル(大)
レクタングル(大)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加